出会いの中で人は成長
「卒業式で答辞を読んだんですよ。」そう言って嬉しそうに語ってくれたのは県議時代に知り合ったY君の里親さん。
Y君と初めて会ったのは彼がまだ小学校に入学する前だったから、もう13年以上になる。夫のDVから逃げ出てきたお母さんに連れられていたのがY君だった。知的障害の傾向がみられたY君の手帳の申請や、公営住宅への入居など、親子が安心して暮らせるようお手伝いをし、その後も度々関わりを持ってきた。
数年前のある寒い朝、Y君のお母さんは心臓の発作で帰らぬ人となった。ゴミで埋まった家の中に入ってはじめて、これまで訪問しても家に上げてくれなかった理由が理解できた。お葬式を済ませた後、党支部の皆さんと一緒に何日もかけてゴミをかき出し、部屋の片づけを子どもたちもいっしょに行った。急に逝ってしまったお母さんとの思い出を整理し、これまでの暮らしの整理をすることは、彼の今後にとても大切なことのように思えてならなかったからだ。
保護してもらった施設に毎朝迎えに行き、夕方には彼を連れて戻った。車の中で、作業中に、ご飯を一緒に食べながら、彼といっぱい話をした。学校に行けなかったことや、家に閉じこもっていた生活を知った。
県議会の控室に連れて行った時に彼が、「こんな仕事に就きたい」と言ったことに驚いた。「人を助け、役に立てる仕事がしたい」と言うのだ。そして「大きくなったら議員になるか、白川さんの秘書になりたい」と。
彼は奇跡的にマッチングした県外の里親さんに引き取られ、お母さんが毎晩抱きしめて寝てくれた。心身ともに安定した彼は、特別支援学校の高等部をこの春卒業して、実習先だった一般企業に「ぜひうちに」とこわれて就職した。車の免許も取って毎日元気に仕事に通っているそうだ。新たにできる夜間中学に通うことも検討している。
人は出会いの中で、他者とのかかわりの中で成長していく。私はY君からたくさんのことを教てもらい続けている。