置き去りにされた炭鉱労働者

四国・九州を駆けまわり、つどいや医療現場の皆さんとの懇談で現場の声を聞かせてもらっています。
15日には山口県宇部市の長生炭鉱跡地へ。驚いたのは、危険だと言われていた海底炭鉱がこの地域には数多く存在していたということ。宇部炭田の生産の9割以上が海底炭鉱だったといいます。「宇部の炭鉱は“水非常”(水没事故)が多く、1911年から 1948年にかけ計528人の犠牲者を出しました。」と現地の看板にも記載されていました。
戦時中の国策としても非常に大事だった石炭採掘。長生炭鉱では1942年2月に海底の坑道の天盤が崩壊。海水が浸水して183人の坑内労働者が犠牲になり、うち136人は植民地支配下の朝鮮の人々でした。故郷の家族へ秘密裏に送られた手紙には、「強制連行」され監視下で逃げられず、過酷な労働を強いられていること、「必ず脱出して生きて帰る」ということがしたためられています。事故後、抗口はふさがれ、埋められ、生きて故郷に帰ることが叶わないまま、遺骨は長い間冷たい海の中に置き去りにされました。
その遺骨が「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」とダイバーの手によって発見されました。この遺骨は誰のものなのかを調べ、遺族の待つ故郷に帰してあげたいと思うのは人として当たり前です。そのためにも国が「より安全な遺骨収集」に力を注ぎ、速やかに故郷へ帰れるように韓国政府と力を合わせることを心から求めます。
(9月28日付四国各県「民報」に掲載)
